ZEN麺 Hot News 創刊号
                (1998年2月発行)

第1章『全麺協素人そば打ち段位制度の発足』

1.制度発足への期待
全麺協顧問   平野 繁臣
 平成9年8月下旬、北海道幌加内町の開基100年を記念して「日本新そば祭り’97inほろかない」が開催され、全麺協の会員も多数参加して各地の自慢のそばを提供するなど好評を博した。この機会をとらえてかねてから懸案となっていた『そば段位制度』も正式に発足し、第1回の段位認定会が行われた。全国共通の『そば段位制度』は平成7年の福井県池田町で開催された『そば祭り』以来の懸案事項であり、全麺協でも会議の都度そのあり方について論議を重ねてきた課題でもあったが、今年度ようやく幌加内町の「日本新そば祭り’97inほろかない」において形式を整え、正式にお披露目することとなったのである。たかが『素人のそば打ち』コンテスト、お遊びに過ぎないという見方をする向きもあるかも知れないが、全麺協にとってこの『そば段位制度』の持つ意義と役割は極めて大きいものがあることを認識する必要がある。
 『そば』をテーマに地域の振興を目指す地域が結集して誕生した全麺協も既に4年が経過した。設立時の目的を果たしながら今後も持続的に発展を続けるためには、二つの戦略的な目標の実現に務めることが要求される。その第一は、全麺協組織内部の業務遂行体制の整備と意識の変革であり、第二は対外的な活動・情報発信能力の強化、『そばおよびその関連分野』の底辺の拡大である。
 およそ如何なる組織においても、その活動を活性化するためには共通の目標を達成するために構成員が共同して取り組む手段(何等かの具体的な事業)の存在が必要であるが、全麺協の場合も決してその例外ではない。
 今回の『そば段位制度』は、こうした意味での全会員が共同して取り組む共通の具体的な事業(手段)の一つである。この事業を通じて組織内部の業務の遂行体制が次第に整備されるとともに、構成員の意識の変革にも大きな影響が生じる可能性が出てくる。また、この『そば段位制度』の開催を報道するマス・メディアを通じて、全麺協の存在やその活動が社会一般に認知され、全麺協の情報発信能力の強化にも役立っことになる。それは『そば愛好者』の底辺の拡大であり、『そば産業の育成』や『そば文化の振興』にも貢献することとなろう。『そば段位制度』の普及定着と全麺協のますますの発展を夢見ている。



2.全麺協素人そば打ち段位制度実施要領(平成9年7月制定)
【要項】
[趣旨]
 本要領は、全国麺類文化地域間交流推進協議会(以下「全麺協」と称す)がめざすそばによる地域振興、麺類(そば)を通じての地域食文化の普及、そばの効用等の啓蒙を推進するための手段として全麺協会員市町村が有するそば道場等で実施する素人そば打ち段位認定制度のあり方を示すものである。

[「素人」の定義]
 「素人」とは、そば打ちから収入を得ていない者、又は同様な状態にある者をいう。「プロ」とは、そば打ちを主たる収入源としている基幹的そば打ち従事者をいう。

[素人そば打ち段位制度の実施基準]
(1) 実施(認定)基準は別に定める運用基準(本誌p8参照)の通りとする。なお、三段以上についてはそばの植物生理、栽培技術、地域食文化、そばの健康的効用等に関する筆記(面接)試験を課すものとする
(2) 実施(認定)基準、審査方法、筆記試験の作成は全麺協素人そば段位普及委員会(以 下「普及委員会」と称す)において行うものとする。
(3) 普及委員会は会員市町村及び学識経験者によって構成するものとする。
(4) 普及委員会の構成は全麺協総会において決定、変更するものとする
(5) 普及委員会は、
@実技・学科試験のあり方、審査のあり方、審査員の推薦を検討する「企画運営部」
A段位認定イベントのあり方を検討する「実施運用部」B有段者の管理、応募者の対応を検討する「管理部」で構成するものとする。

[段位認定イベント]
(1) 段位の認定は原則として全麺協会員市町村(団体)が実施する段位認定イベント(以下「会員認定イベント」と称す)において授与できるものとする。
(2) 会員認定イベントで授与できる段位は二段までとする。
(3) 三段以上の認定は原則として全麺協会員市町村(団体)が実施する日本そば博覧会(以下「全国認定イベント」と称す)において授与できるものとする。
(4) 全国認定イベント(三段以上)への応募に関しては予選ができるものとする。なお、予選は地域ブロック毎に会員認定イベントで実施するものとする。

[審査体制]
(1) 会員認定イベントで認定する二段までの審査を行う体制は普及委員会で作成した認定審査員リストから最低1名を選定し、その中から審査委員長を選抜した体制で実施するものとする。
(2) 全国認定イベントで認定する三段以上の審査を行う体制は普及委員会で作成した審査員リストから3名以上で構成し実施するものとする。

[段位認定イベントの方法、審査方法(基準)]
 別途、普及委員会で検討、作成するものとする。

[有段者の管理]
(1) 二段までの有段者は認定した市町村(団体)が管理し全麺協事務局に通知するものとする。
(2) 三段以上も含め有段者リストは全麺協事務局が市町村(団体)からの通知を整理し統括管理し会員に情報提供するものとする。なお、有段者のリストの公開、有段者との情報交換の場としてインターネットにおけるホームページの開設を視野においた検討を行うものとする。


【運用】
[主催者の経費]
(1) 審査員の旅費、宿泊費、謝金等は主催者の負担とする。
(2) 広報活動の経費は主催者の負担とする。
(3) 参加者への連絡事務は主催者が責任をもって行うものとする。
(4) コンクールに際しての事故等に対処するため主催者側として損害保険への加入を義務づけるものとする。

[参加者の経費]
(1) 旅費、宿泊費等は自己負担を原則とする。
(2) コンクールに際しての事故等には十分注意するよう喚起するものとする。


【全国認定イベント、日本そば博覧会における経費負担のあり方】
[主催者側の経費負担方法について]
(1) 出展経費についての取扱い
@ 固定料金制(貸借料又はテナント料として徴収)
A 変動料金制(売上納付金として徴収)
B 出展経費は徴収しない
等主催者が@〜Bの出張経費のあり方を判断するものとする。
(2) 旅費、宿泊費(食費含む)についての取扱い
 基本的には主催者が負担することとするが、
@ 調理出展のみの場合は4名を限度とする。
A 物販出展のみの場合は2名を限度とする。
B 調理・物販両方に出展する場合には4名を限度とし、補助者として主催者側でアルバイト等を雇用し出展市町村(団体)の便宜を可能な範囲内で行うものとする。
(3) 燃料費、物品費(必要最小限の箸、簡易な器等)についての取扱い基本的には主催者側が負担するものとする。

[出展者側の経費負担について]
(1) 出展経費は主催者が選択した制度による料金の負担
(2) 参加者の旅費
(3) その他、独自の出展に要する経費等とする。

[その他出展に際して認識しておくべき検討課題]
(1) 参加市町村は出展参加団体に出展経費と旅費等を公費として支給することとなること。
(2) 出展参加団体は調理・物販等により収益が派生する為、その取扱いを定めておくこと。
(3) 収益の取扱については、参加市町村と出展参加団体間で別途、規則をつくり検討を行うこと。
(4) イベント主催に伴い、業務時間外の作業等に対して市町村職員の場合は超過勤務手当の対象となるが、住民の場合はボランティア活動となる場合が多く、手当の有無によりトラブルが派生することが予想される。そのため、予め住民とのトラブルが生じないよう十分な調整を図ること。



3.段位認定基準・初段〜三段(平成9年7月制定)
[趣旨]
 『そば』は永い歴史と地域文化の中で育まれ、全国のふるさとを代表する食品として、特別の思い入れを持って全国各地に生きずいている。今後『安全で健康な食品志向』の高まりと、『手作り文化』の見直し、さらには有益な『余暇活動』を送りたいとする欲求から「手打ちそば」を生活の中に取り入れようとする動きが全国的に広まってくることが予想される。このような動きをチャンスとしてとらえ『そば』のPRと普及を周るため、素人の方を対象に『段位認定制度』を実施することとした。『段位認定』の実施に合わせて、その年に開催される『全麺協素人そば打ち段位認定大会』の地区予選会を全国各地で開催し、より一層のそば打ちファンの拡大を図ることを目指すものである。
(1) 段位認定の要綱
@ 審査対象 水回し、こね、のし、切りの4工程を後記の「判定基準」に基づいて審査する。
A そばの量 段位により「そば粉」と「つなぎ粉(小麦粉)」の重量を決める。
B 道具 そばを手打ちで製麺するための道具とし、地域性を考慮して用いる道具は任意とする。ただし、「半自動送りの包T」など、手打ちを補助する道具の使用は認めない。
C 材料 開催委員会審判部が用意する「そば粉」「つなぎ粉(小麦粉)」「水」の3点とし、これ以外の材料の使用は認めない。
D 所要時間 後記の「そば打ちに要する時間」を判定基準とする。
E 切り幅 切り幅2.2mmを基準とする。地域の特色も考慮に入れる。『切り幅』と『切り揃い率』によって段位を判定する。
F 姿勢 地域の特色等を考慮し、立つ・座るの打ち方は問わないが、そばを打っている姿勢や態度については判定対象とする。
G その他 そば粉のこぼれ、道具や衣服・身体の汚れ、道具の後始末も判定に加味する。又、食品衛生の関係上、爪、頭髪の手入れ、衣服についても判定に加味する。
(2) 段位認定基準
 次の「段位認定基準」に基づき、『全麺協素人そば打ち段位認定大会審判部門』の認定審査員の厳正な判定によって認定する。段位は『初段』から順に受験し、一段ずつ上位の段へ上がることとし、受験した段位以上の実力があると認められても「飛び段」はできない。(ただし、平成9年度および平成10年度全国大会においては、特例として三段位認定を行うことができるものとする。)また、各会員のそば道場などにおける『段位認定会』は年1回のみの開催とする。所属する道場を変更することは原則として禁止する。

【初段】 そば粉の重量は、700g(そば粉・500gつなぎ粉・200g)とする。
@ そば打ちが40分以内に終了している。
A そばが切り揃われている率は60%である。
B そばを持ち上げても20cm以上につながっている
C 打つ姿勢が堂々として落ち着いている。
D 周囲へのそば粉のこぼれが少なく、道具や衣服、身体の汚れ方も少ない。また、道具の後始末がきちんとできている。
【二段】 そば粉の重量は、1,000g(そば粉・800gつなぎ粉・200g)とする。
@ そば打ちが40分以内に終了している。
A そばが切り揃われている率は70%である。
B そばを持ち上げても20cm以上につながっている。
C 打つ姿勢が堂々として落ち着いている。
D 周囲へのそば粉のこぼれが無く、道具や衣服、身体の汚れ方も少ない。また、道具の後始末がきちんとできている。
【三段】 そば粉の重量は、1,500g(そば粉・1,200gつなぎ粉・300g)とする。
@ そば打ちが40分以内に終了している。
A そばが切り揃われている率は90%である。
B そばを持ち上げても20cm以上につながっている。
C 打つ姿勢が非常に堂々として落ち着いている。
D 周囲へのそば粉のこぼれが無く、道具や衣服、身体の汚れは全くない。また、道具の後始末が完璧にできている。

(3) 三段以上の段位認定
 大会主旨に基づき、上位の段位認定にあたっては、そば栽培も含めた経験や知識、人物評価、そば普及への貢献度を考慮するなど、ただ単なるそば打ちの『技能競争』に終わらないよう認定基準を別に設定するものとする。



【全麺協素人そば打ち段位制度認定審査員名簿
氏  名 職業・ 役職 住   所
鵜飼 良平 上野「薮そば」三代目当主
社団法人日本麺類業団体連合会理事
フーディアムクラブ講師
東京都
唐橋  宏 桐屋・夢見亭当主
全国麺類文化地域間交流推進協議会会員
会津そばトピア会議会員
福島県会津若松市
中山 重成 越前そば道場当主
福井県玄そば振興協議会会長
福井県福井市
高橋 邦弘 翁 当主 広島県豊平町
阿部 孝雄 竹やぶ当主 千葉県
氏原 暉男 農学博士
信州大学名誉教授
長野県伊那郡南箕輪村
高橋 礼文 早稲田大学教授 東京都
右近 龍也 フーディアム・コミュニケーション株式会社
  取締役・東京事業部長
日清食品株式会社
  広報室・東京広報課長
東京都
堀尾 俊夫 日本手打ちそば保存会会長 愛知県春日井市
平成9年4月17日作成(これは全麺協総会時に承認された審査員リストである。)




4.制度の運用解説
(1) 全国・地方大会実施のあり方
「全麺協素人そば打ち段位制度」の発足に伴い唯一、三段位認定を行うことが出来る全国大会(全麺協・会員市町村共催)と二段・初段位認定を行うことが出来る地方大会(会員市町村主催)の位置づけを、今後の本制度の権威を高め、全麺協の共通財産として育成していくという見地から、その実施のあり方について会員間の認識の徹底を図ることが重要である。その理由として最近、転作の作物として「そば」を導入する市町村が増え、お決まりのパターンとして「そば処」「そば道場」を市町村が事業主体となり整備する事例が至る所に見られるようになり、そこには日本独特の優れた物真似精神が発揮されている。このような状況の中で、全麺協が後発の地域に遅れを取らないようにするためには、そばを地域振興のシンボルテーマとする「理念」を明確に持ち、そのための「意味と文脈」を保持することが重要である。それが持続力と活力を備えることになるからである。
 「そば」は元来、「おもてなし」のハレの食事である。この精神を活かしたコンセンサスが地域に育まれることが重要である。交流人口を活用した地域振興はこのコンセンサスが地域に定着されなければ成功はおぼっかない。「全麺協素人そば打ち段位制度」はこのコンセンサスづくりの有効な手段なのである。
 ここで、全国・地方大会の基本的なルールについて整理し、本制度の質的向上を会員相互の創意と工夫の中で図っていく一助としたい。
@ 与えられる段位
全国大会 年1回 原則として三段位
地方大会 年1回 二段位、初段位
A 大会運営方式
全国大会 全麺協、開催会員市町村共催
地方大会 開催会員市町村主催、全麺協後援
B 段位認定の審査体制
全国大会 全麺協認定審査員が3名以上審査委員に含まれていること
地方大会 全麺協認定審査員が1名以上審査委員・審査委員長に含まれていること
C 全国大会への参加
地方大会で二段、初段位の認定を受け会員市町村・団体の推薦を受けた者
D 認定証の交付と認定者の登録
全麺協事務局が独自の認定証(段位毎に認定番号を交付)を大会事務局に交付し、認定者を登録
E 全麺協認定名人位の認定イベントの開催(検討課題)
3〜4年毎に全国大会の上位入選者を対象に東京で名人位認定大会を実施
F イベント名杯の統一
「全麺協(ZEN)素人そば打ち段位認定大会(コンテスト)」とする
 また、「全麺協素人そば打ち段位制度実施要領」は、まだ完成されたものではなく、実際の大会運営を通じて随時、改善されていくべき性格のものであり、会員からの申告に基づき全麺協の総会等で改正を行い、より優れた制度にしていくものとする。なお、全麺協認定審査員については各地域ブロック毎に配置されるよう増員を図る必要があり、会員市町村からの推薦を願いたい。
(2) 制度の円滑な推進を図るための管理システムの構築
 本制度を円滑に推進するためには審査体制および認定者管理を厳密に実施することが重要であるとの観点から、次図により事務処理を行うこととしたいので会員各位の理解と協力を願いたい。

[段位の認定大会を開催する場合]
@ 全麺協事務局(又は東京事務所)に後援名義使用と合わせて段位認定大会の開催要領を事前に事務局に文書で申請
A 全麺協事務局は内容を審査の上、認定が予想される数の認定証(交付番号)を開催事務局に交付(不足が生じた場合には後日交付、余剰が生じた場合には全麺協事務局に返却)
B 開催事務局は認定者(番号)を全麺協事務局に速やかに報告を行うものとする。





5.制度の活用と地域経営のあり方
全麺協顧問  松村 広一
−「そば」は地域を知らしめるメディアである−
 全国各地でそばの栽培、そば道場・そば処づくりが進められている。これは、そばブームを活用しての地域振興策への取組みであり、また、中山間地域における有望な転作作物としての期待からである。
 全麺協会員市町村もうかうかしてはいられない。全麺協として他の追随を許さない優位性を持つための工夫が必要になる。それが「素人そば打ち段位制度」と考えたい。
 一昔前は、そば屋の亭主がそばの薙蓄を披露し食べさせていただくというような「作り手市場」であったような気がする。その蕗蓄が薬味であった。しかし、これでは息苦しい。亭主のご機嫌を伺って食べているようではそばの底辺は広がらない。ワインのソムリエではないが、そばのソムリエをめざすのであれば別であるが。
 やはり楽しい雰囲気の中で味わうのが健康に最も良い。この「亭主の薙蓄を聞く」時代から今、そばの植物生理、地域、食文化、人情、亭主の人柄と技術などを総合的に知り、味わう「そばの世界に自ら参画する」時代になってきたと私自身思っている。
 客も薙蓄を言う時代なのである。だからこそ全麺協の顧問格の福島県会津若松市の「桐屋」の唐橋宏氏のような多芸な魅力人が人気を集めているのである。そばを食べてもらうということは「そばの精・四季の旬」というものを実感できる背景(地域や人)を演出することである。施設を作って食べさせればよいというものではない。

−全麺協素人そば打ち段位制度は地域経営上のCI戦術−
 全麺協素人そば打ち段位制度が地域振興の有効な手段であるという理由には大きく分けて次の二点がある。

[地域内部に向けてのビジネス創造の基盤づくり]
 第一は「地域内における意識変革の誘導」である。そばを地域振興のテーマに設定するということは、そばを食べに訪れる観光・交流人口を活かした地域内市場の形成をめざすということである。人々が訪れるようになればそば関連のビジネスが創造される。そして、婦人・高齢者も参画できる就業機会が増加するわけである。
 このようなシナリオを描くためには「そばが作れる、そばを打てる、そばを語れる」人材(内なる“そば人口”)の育成が必要不可欠になってくることは理解できよう。地域住民がそばを知らないそばの里は本物、とは言い難い。(昔からあった、新たに導入したということはこの際問題ではない。)そのためには、そばのさまざまな魅力・効用を地域住民がまず享受することが重要である。
 その際、そばの勉強の“励み”となるのが「全麺協素人そば打ち段位制度」である。幌加内町のシンポジウム(後述)でも述べたように「そば打ち」は産業、福祉、教育面でさまざまな施策推進上の応用が考えられる。生涯学習の一環として「素人そば打ち段位制度」を導入し、それに必要なそば粉は行政・農協が買入るというようにすれば農家のそばの再生産意欲も高まるし、需要拡大の起爆剤となる。この程度の投資は予防医学、コミュニティー増進の見地から住民各位の理解が得られる範疇のものであろう。
 地域振興の住民還元という面もある。そば文化を定着させるためには時間とある程度の投資は覚悟しなければならない。

−地域外部に向けてのそば愛好者の育成・普及−
 第二は「外なるそば人口の育成」である。そばは品種名よりも生産地名で語られる場合が多い。気候・風土がそばの風味に強い影響を与えるからだ。まさに、そばは地域ブランド商品なのである。地域を売り込むことがそばのブランドづくりに直結する。
 また、世の中、カルチャーブームである。知識や技術を学ぶことに熱中する人々が増えてきている。テレビゲームには経験を積むことにより能力を向上させ物語を作っていくローリング方式のゲームというものがある。そば打ちも道場で腕を磨きながら段位を獲得していくことは生きがいのローリングゲームといえないだろうか。人々を熱中させる仕掛けが、「素人そば打ち段位制度」にはある。NHKの「素人のど自慢」に匹敵するようなイベントに育つ要素は十分なのである。
 このように「全麺協素人そば打ち段位制度」が定着できる地域こそ「そばの里」にふさわしい地域経営戦略が展開されている地域といえる。この制度を全麺協の共通財産「宝」として育てていくことが必要である。
 また、そば打ちは日本の「もてなし文化」の典型であるからこそ今、再評価されているのである。段位制度は同時にこの「もてなしの心」を個人・地域レベルで育む有効な手段と考えたい。









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