ZEN麺 Hot News ’98夏号
(1998年8月発行)
| 第2章『全国元気な市町村紹介』 |
|||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 岐阜県清見村「智恵の過疎が最も怖い」 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 今季から全麺協会員に役に立つ情報の提供を目的に全国各地でユニークな地域振興施策に取り組んでいる自治体の活動を紹介するコーナーを始めることとしました。第1回目は岐阜県清見村の取り組みを紹介したい。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 1.過疎からの脱却に必要な3つの知恵 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 清見村は岐阜県の北西部、高山市の西に隣接した西日本第2位の広大な面積を有 する柑である。飛騨牛の産地として知られ、牛の飼育頭数(平成8年3,276頭)が人口(平成9年12月現在2,669人)よりも多い村である。町のもう一つの自慢は、一般会計予算が30億円であるのに対して農業粗生産額が21億円と高いこと。投資効果の高い農業が営まれていることが特徴となっている。 ここの名物は役場企画振興課長の松葉晴彦氏。会った瞬間に熱血漢だということがわかる。7年前に県農業改良普及員から役場にヘッドハンティングされた人だ。獲得に乗り出した村長も素晴らしい卓越した経営者である。 本村が脚光を浴び始めたのが道の駅「パスカル清見」。実質的には農林水産省の農業農村活性化農業構造改善モデル事業などを活用しての交流施設群である。内容は直売施設、レストラン、ホテル、オートキャンプ場、ラベンダー園、体験メニューからなっている。これだけを見れば今、全国で整備されている交流施設整備と何ら変わるものではない。しかし経営戦略が実に素晴らしい。運営は第三セクターで行われている。 松葉氏は過疎からの脱却には3つの知恵が重要であると述べている。 第1の知恵は『頭脳の知恵』。「知恵の過疎」が最も恐ろしいとのこと。過疎地域に限らず世間の共通の悩みは人材(人財)の不足である。これからの事業を考える場合に、地域のみの知恵だけでは不十分である。事業の経営・運営面を地域・役場の人材だけで仕切ることは場合によっては住民に足下を見られることになる。住民の持つ情報量が役場のそれを上回ることが多くなってきたからだ。1億総評論家の時代である。役場内はお友達感覚が蔓延し、リスクの伴う事業経営には消極的になりがちである。正直言って勉強・経験も足りない。一方、集落内ではとかく声の大きい者が勝つ傾向にある。これを打破するためには周到な準備と対応が必要であると松葉氏は言う。そのためにはU・J・Tターンを促すヘッドハンティング戦略が本村では功を奏したとのこと。それは定住人口の確保にも寄与した。 |
|||||||||||||||||||||||||||||||||||
【清見村活性化蔓陀羅図】
C:K,Matsumura |
|||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 本村は地域振興策の拠点を最も過疎の進んでいる小原集落に選んだ。小原集落は役場から34km、人口400人(101世帯)の集落である。今後の地域振興を図るためには最悪の状況の集落を変革することが最も地域住民に「やればできる」というインパクトを与え、強力な説得力となることと考えたからだ。しかし、行政にとっては非常にリスクの大きい挑戦であったといえる。 第2の知恵は『地域の地の利(地恵)』。具体的には標高800mでしか出来ない資源とは何か?を考える知恵である。ここでは農畜産物だけではなく人の持つ技能を有効に資源として活用していることが特徴といえる。 第3の知恵は『治める知恵』。地域を納得させる知恵である。現在これが最も難しい問題といえる。決断をすること、責任を果たすこと、まさにプロデューサー能力が自治体責任者には求められている。決断が、優柔不断になりがちな役場内、地域内の決断、ヤル気を促す。いつまでも話し合いをしていても将があかない、結論はなかなか出ないことが現場では多い。最終的には決断をするという勇気が当事者になくてはならない。決断する能力(マネジメント)が重要な時代になってきたと松葉氏は言う。役場の企画振興課、財団法人パスカル清見21の職員(75名)は、ほとんどが民間出身者で構成されている。仲間同士の傷のなめ合いをしていても前進 しない。お友達感覚では乗り切れないからだ。財団の職員の給料は自分たちが稼ぎ 出すという使命感が第三セクター事業成功の鉄則であるとなかなか厳しい。現在、財団の黒字の一部が逆に一般会計に充当されている。本来の事業を起こす意味が実行されているわけである。 |
|||||||||||||||||||||||||||||||||||
2.地の利を活かす知恵とは?「田舎名人」制度の創設 |
|||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 「清見でなければ出来ないことを探せ!」というコンセプトで検討が始められた。煮え切らない集落座談会が18回も行われたそうだ。悪戦苦闘の中、KJ法での議論の集約が有効であったという。意見集約の模様を再現してみると「何か一人一つ自分が応援できることを話さなければ帰さない」と半分脅しのような注文を付けた。そうすると「自分にはノウハウはないが豆腐は中沢さん、山野草は小谷さんが詳しいぞ!」「民話は二村さんの語りが最高だ!」というような意見が出てきた。これを契機に、ラベンダー、米作り、山菜・山野草、木工・魚、花もち、語り部等のインストラクター・田舎名人制度が誕生した。地元の知恵のある人材を活かし商品開発を行うとともに、講師を活かした体験ツアーを商品化し都市住民から好評を博している。 当初は集落出身者を無条件にUターンさせることを考えていたが、その後、労あって益なしと実感し、能力ある者に限定した活動に切り替えた。 |
|||||||||||||||||||||||||||||||||||
3.地域内市場形成に伴う農業転換 |
|||||||||||||||||||||||||||||||||||
| マーケットにあった商品を揃えるため、基盤整備に取り組んだ地域から米作りを止め、付加価値の高い農産物に転換していった。そのためには売る努力、市場づくりが重要であり、役場職員が全力を上げてこれに取り組んでいる。その一環として愛知県一宮市にアンテナショップを一昨年設置した。これは、一宮市商店街より出展要請があったもので週3回野菜(現在48品種)を職員が配送している。売る楽しみが生まれた。これを婦人・高齢者の生きがい農業に発展させることを考えている。いわゆる、系統出荷の産地戦略と地域内・生きがい農業の二本立である。そのため、トマト、きゆうり等の産地としての戦略作物は農協系統出荷に集中化させている。販路の多様化は今後の経営リスクの回避に結びつくはずである。現在、村内外に直売施設4店舗、大阪にも出店を計画している。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||
4.福祉施策との融合「元気にポックリ死ねる村!」をキャッチフレーズに |
|||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 今後の行政施策を考えると農業振興であっても福祉施策との連携を視野に入れた発想が必要である。生きがい農業の担い手として作る・売る喜びが生きがいに直結する。半分冗談だが「元気にポックリ死ねる村!」をキャッチフレーズにしていきたいとのこと。やや刺激的でもあるが的を得ている。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||
5.「財団法人パスカル清見21」の事業内容 |
|||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
|||||||||||||||||||||||||||||||||||
6.道の駅のイベントは年間4回、イベントの充実が今後の鍵 |
|||||||||||||||||||||||||||||||||||
| イベント期間は延べ2ヶ月間で1億8千万円の売上(全体の4割)をあげている。イベントの重要性が読みとれる。しかし、端境期の6、9月の対策に苦慮しているとのこと。何かよい誘客イベント企画がないものかと頭を悩ませている。よいイベント企画には百万円を出したいと言っていた松葉課長の言葉が今でもなぜか耳に残っている。一度ぜひ訪問していただきたい村である。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||
施設別売上額の推移(単位:千円)
|