ZEN麺 Hot News ’98秋冬合併号
                (1999年4月発行)


第6章 『地域経営学』
地域経営の視点から見た「まちづくり戦略」
〜中心市街地活性化法を中心として〜
全麺協顧問   平野 繁臣
1.「まちづくり3法」の趣旨とそれがもたらすもの
 現在、日本の各地で中心市街地の空洞化が目立ってきている。一昨年12月の日経費産業研究所の調査によれば、全図の商店街のうちの4分の3は「空き店舗」を抱えて悩んでおり、さらにそのうちの半分は1年前より空き店舗の数が増加しているという。
 これまで地域の顔であり、賑わいの中心でもあった商店街の衰退が目立ってきている。特に地方都市の中心部では、空洞化のスピードは考えている以上に早く、崩壊の危機に瀕している商店街も少なくはなく深刻な問題となっている。こうした状況の中で、昨年6月3日に「中心市街地活性化法」が公布され、続いて7月24日には施行されていることはご承知の通りである。
 これにあわせて、同年5月「大規模小売店舗(大店法)」の廃止が決まり、それに代わる「大規模小売店舗立地法(大店立地法)」が成立しているが、これもやがて2000年4月から施行の予定であり、また都市計画法の改正も決定し、昨年11月から施行 されている。この3つの法律を合わせたものがいわゆる「まちづくり3法」と呼ばれているものであるが、時期を同じくして世に言う「街づくり3法」が出そろうことになつた。
 これまで25年間にわたって「規制」という形をとって、流通業界の秩序を定めてきた「大店法」の廃止と「新まちづくり3法」の問には、その基本姿勢と考え方に大きな相違がある。中小小売業を保護するために政府が介入して、さまざまな規制を加える「経済杓規制」という考え方から、ぴまちづくり〃やび生活環境の維持向上”という視点から、自治体が大型店進出の是非を判断する「社会的規制」への姿勢の転換である。こうした考え方や姿勢への転換は、時代の趨勢であり反対する理由は少ない。
 ほとんどの欧米先進諸国は、都市計画に基づく土地の用途規制や環境保護法などによって大型店の進出を社会的に規制している。そうした意味では、今回の改正によって日本もようやく国際社会の常識的なルール(デローハ十ル・スタンデード)に近づく構造的な変化を目指して動きだしたということもできよう。
 ただここで最も重要なことは、「中小商業や商店街の活性化」と「地域住民の個性豊かな消費生活や暮らしやすい街づくり」とを、両立させる方法を見つけ出すことであるが、それがなかなか難しい。
 改正都市計画法によれば、市町村は地域の実状に合わせて「特別用途地区」を柔軟に定めることができることになっている。これによって市町村は大型店の立地を制限する「中小小売り店舗地区」や、沿道に中小小売店を集中的に配置する「沿道業務機能地区」を定めることができる。しかし、こうした地区に定められるのは、全国土の3.7%の市街化区域だけである。しかし、我が国において、現実に流通業界が施設の新設を計画するのは、主に市街地ではなく郊外の市街化調整区域や農地である場合が多
い。これらの地域では開発を認めないのが原則であるが、これまでの例ではなし崩し的に用途変更が行われてきている。日本では、都市計画は未だ十分定着してきているとは言えないし、その策定に当たって住民が参加する方法も用意されているとは言い難い。こうした欠点も次第に改めていかないと、今回の法改正もその効果は半減してしまうことになろう。
 また、同時に成立した「大規模小売り店舗立地法」では、進出を希望する大型店に対して、自治体が注文をつけることが出来るようになった。進出する大型店が、交通渋滞や騒音、廃棄物などの被害を周辺に与えると判断した場合には、自治体は改善を求めることができることになっている。地域社会の構造や環境の保持のために行われる「地域の側の自主的な判断」が、ある程度専重させる余地が生じたということである。
 しかしこの場合、自治体が改善を要求できるのは、駐車場の広さや店舗の配置などに限定されており、その検討の期間も最長で10カ月問に限られているなどの問題点も多く、現場の市町村関係者の不満もそこにあると言える。しかし、そうした地元の要求できる枠組みを拡大すればそれでよい、というわけにもいかないこともまた明白である。
 一般的にいって地元の倫理は大型店の進出阻止であるから、駐車場の拡大を迫られ、その確保のために店舗面積が削減されたり、騒音防止を理由に営業時間の短縮を迫られるという可能性も生じるであろうし、自治体が、交通・環境問題を口実に実質的には従来通り、或いは、これまで以上の出店規制を行うことも考えられるのではないか、というのが大型店側の抱く不安である。
 そうした問患に対応するため、通産省は新法の運用手続きを定めた指針・通達を作り、自治体が指針の範囲を超えて独自に規制を上乗せしたり、新法の趣旨を逸脱した運用がないよう求めるとともに、自治体の行政手続きを一般に情報公開して、審査内容の透明性を高めるなど、公正な運用に努めることにしている。
 このようにそれぞれの立場によって反応は異なることになるが、それらのいづれにも公平な立場を要求されるため、通産省の定める指針は地域ごとの個別の問題まで踏み込むことは不可能であり、全国共通の最大公約数的なものとなることはやむを得ないという事情がある。従って、大型店問題は地域によって事情が異なることは当然にあるにも関わらず、通産省が定める一率の指針に従わなければならず、市町村は全国画一的な運用を強いられることにならざるを得ないことになる。
 本来「地域のことは地域の意志で決める」というのが新法の精禅であるが、この場合の地域とは地域内の中小商店主、あるいはそのリーダーたちの意志に置き換えられる場合が多く、新法(特に都市計画法)を通じて形を変えた大型店規制を継続したいという思惑が強く、政治力を駆使して従来型の保護と規制に頼ろうとする動きは、逆に中心市街地の活性化を阻害することにもなりかねない危険性をはらんでいる。真の意味での「地域の意志」とは、商業者だけの意志ではなく、消費者を含む地域住民の主体的な意志であり、こうした住民の意志を受けて自治体が十分な権限を行使できるような透明で実効性のある仕組みを作り上げなくてはならない。
 本来、自由な競争が前提である筈の「市場経済システム」の中にあって、規制と保護によって競争を回避し、地道な商売への情熱が希薄になっても、消費者である住民に目を向けることを怠っても、店を維持していけた時代は終わったということを自覚する必要がある。時代の流れの中での経営環境の変化に対する理解と認識を深め、過去の経営姿勢に対する反省からスタートしなければ、どんな助成策も効果はあまり期待できないことになる。





2.地域の振興に不可欠な商業機能の集積と個性化
 中心商店衛の問題は“商業者のための固有の問麓”であり、地域社会や農業者は関係がないと他人事のように考える向きも少なくないが、地域を経営という視点からとらえる場合、決してそのような無関心な態度で済まされる問題ではない重要な地域の課題である。近年の生活意識の変化やライフスタイルの変化などもあって、地域の住人はより質の高い生活を求めるようになってきており、都市としての魅力を高めるためには、高度で多様なニーズに応える生活機能を備えていくことが重要な要素となってきている。
 魅力的な地域の形成を進めていくためには、良好な「地域環境・地域基盤」を整備することは勿論であるが、高次の商業機能の集積と地域の特性を生かした個性的な中小商業街区(かいわい空間)の形成が、必要不可欠な条件となってくる。このような諸機能を充足させることによって地域の生活文化が育まれ、自ら情報を発信し得る魅力的な都市づくりを進めていくことが、地域の活性化につながるのである。
 ライフスタイルの変化や消費に対する価値観の変化は、消費やサービスに対する場合と同様に、商業空間に対してもさまざまなニーズを生み、「自らの感性に合った質の高い街」であることを求めるようになってきている。商店街の活性化のためには先ず何より「人が集まり、憩い、楽しめる街」を創ることが要求される。来街客は商業地域に対して「情報的機能」を求め、単に商品を購入するという目的だけではなく、「街との触れ合い」を求め「時間の消費」を期待している。商店街にはこうした来街客の期待に応え、地域内において担うべき役割がある。
 これからの商店街は単に商業機能ばかりだけではなく、さまざまな生活機能、コミュニティ機能、都市機能も含めてそれらの相乗効果を考慮した魅力ある商店街を創ることが要求されている。ハードな施設計画ばかりに片寄らず「商店街の個性化・差別化」や「コミュニテイ・イベントの実施」などのソフトな事業も重視した「魅力的な商店街づくり」と、「個性豊かな街づくり」を目指す必要がある。高度成長期から低成長・安定化に伴う成熟期への転換を迎えている時代の流れに対応して、商業機能に加えて地域コミュニティの場としても、その機能の発揮が重要な意味を持つ時代となつたのである。
 中心商店街は「暮らしの広場」「地域の顔」であり、新しい「生活インフラ」である。豊かな生活の実現と地域の福祉向上のためには、地域経営の理念に基づいて「街づくりの視点」にたった魅力ある商店街づくりが重要である。消費者ニーズ、ライフスタイルの変化、地域構造、交通体系の変化などにより、地域内、商店街内の競争よりも、むしろ「地域間、商業集積問の競争」に対応した発想と、「地域社会の中で果たすべき機能と役割」、その関わり方が重要となっている。
 新たな商業環境、新たな時代に対応して、中心商店街の再生・活性化は、それぞれの個店レベルの自助努力が前提であり重要であることは言うまでもないが、商店街全体としての「目標の共有と共同作業」が不可欠の要件になっていることを認識する必要がある。都市全体として目指すべき方向をしっかりと把握し、上位計画との整合性を保ちながら場合によっては「地域経営計画」に対する“商業サイド”からの見直しや提案を行い、地域経営における「商業計画」の明確な位置づけを行うことも、時としては必要であろう。商店街を単に「物を買う」場所から、地域の住民が「地域の生活上必要なさまざまなニーズ」を満たすために集う「暮らしの広場」へと、転換を果たすための機能の向上を目指すべきであろう。
 今回の「中心市街地活性化法」の精神もここにある。いずれにせよ、地域の産業に占める地域産業の位置づけや役割を明確に意識しながら、地域の活性化と商業振興との相乗効果が期待し得るような方向を目指す必要がある。商店街の構成員全員が問題点の認識と理解を深め、目標を共有することによって、活性化計画に主体的に参画し、その推進役となることが要求されていると考えるべきであろう。
 1974年の施行以来25年を経過した大店法の規制もはずされ、遂に新たな競争時代への第一歩を踏み出すことになったが、国際社会の市場開放を求める強い圧力の中で、本格的な規制緩和の進行は、新たな流通革命の大きな要因となるであろう。それに対する対応と支援策として熱い期待を担って登場したのが「中心市街地活性化法」である。この施策を、単純な中小商業者に対する「経済的な補助」策であるととらえるのではなく、地域の活力を増し個性豊かで魅力溢れる地域社会を形成するために不可欠な「中心市街地商店街」の再生と活性化のための「戦略的手段」であり、「最後の砦」であると考えて、地域の総力を結集して取り組む体制を整備する必要があるのではないだろうか。





3.中心市街地活性化の条件(決め手となる自治体の姿勢とTMO)
 そもそも中心市街地の活性化を図ろうとする場合、「中心市街地商店街が衰退した理由は何か」と言う原因を理解することが必要であるが、そこには、多種多様な要因が複雑に絡み合っており、また地域によってもそれぞれ固有の要因が存在するため、それらを明確に特定することは極めて困難であることは言うまでもない。
 しかし、誤解を恐れずにあえて主要な要因と思われる点を類型化してみると、以下の諸点が挙げられる。
@ 都市近郊に「郊外型大型店が進出」し、「豊富な品揃え」や、「店舗構成や価格構成」、「広い駐車場」などの魅力によって顧客が奪われた。
A モータリゼーションの進展で「消費者の行動範囲」が飛躍的に拡大した。
B それに対応する「駐車場がない、または乏しい」ための顧客離れが加速した。
C 人口の都市周辺への流出が進み「中心市街地の人口が減少」している。
D それにつれて、それまで集客機能を果たしてきた公共・公益施設の郊外移転の傾向が出てきた。(行政機関・学校・病院など)
E 自由化と円高の関係で「安い海外製品」がどんどん流入してくるようになった。
F こうした中で、ディスカウント・ストアやアウトレツト・モール、パワーセンターをはじめ、コンビニエンス・ストアなどの「新業態の出現」に顧客を奪われた。
G おりからの景気の低迷と不況感の中で、こうした流れと国内の「供給過剰」が重なっての「モノ余り現象」が進み、「消費の低迷」がますます激しくなっている。
H 中小商店の多くは「家業を営んでいる」というイメージが強く「企業経営の意識」が乏しい。
S 大店法による出店規制に守られて、商店街自体が事業の発展に必要な「新業態の開発」や「業態間・業態内の競争」を回避してきた。
J 職住分離などの影響もあってか、「地域との関係」が徐々に希薄になっている。
 こうした原因をあげればまだまだ無数に続くが、これだけでも「商店街の魅力と競争力の低下」は当然の結果であるともいえる。このまま放置すれば、多くの商店街が「自然消滅の道」をたどることになるであろう。今回施行された「中心市街地活性化法」は、中心市街地の「都市機能の整備」や「街づくり機関(タウンマネージメント・オーガニゼーション=TMO)」への支援、「駐車場整備」や「空き店舗対策」「歩道・小公園の整備」、「介護施設の中心市衛地への立地」など、補助対象となる「150以上におよぶ事業と施策」の多彩なメニューを提供するものであり、事業費総額も初年度で数千億円〜1兆円程度となる巨大な規模が想定されている。
 これらの活性化メニューの中から市町村が自由に選択する方式となっているが、事業に関係する省庁も「通産省・建設省・自治省・警察庁・国土庁・文部省・厚生省・農林水産省・運輸省・郵政省・労働省=以上11省庁+北海道開発庁・沖絶開発庁:合計13省庁」にのばり、共同して事業を認識し助成措置を講じる仕組みになっている。通産省・建設省・自治省の3省は、昨年7月24日、市町村からの質問や競間に応えるための一元的な窓口として「中心市街地活性化推進室」を設置して、事業推進のための体制を整えているが、これらの事業や施策のメニューはあくまでも「商店衛活性化のための手段」に過ぎない。
 問題は用意されたこれらの多彩な手段を、「どのようなコンセプト」の基に「どのような方向」を目指して「組み合わせ活用」していくかが問われることになる。そのためにはその地域としての「アイデンティティーの確立」と、それに基づく商店街の新たな展開に対する「ビジョンと活力」を回復し「魅力を増進」するための戦略が必要となる。「中心市衛地活性化法」による支援策を受ける場合には、市町村は先ず最初に「基本計画」を策定しなければならないことになっており、それに基づいて「TMO」などが事業計画を策定し、国の認可を得てはじめて事業がスタートするという仕組みになっている。
 このように「TMO(タウンマネージメント・オーガニゼーション=価値づくり機関)」は「街づくりの運営・管理を担当する機関」であり、市町村など自治体に計画の策定を働きかけたり、地元商店街などの意見を吸収し調整を行い事業計画を策定するなど、この「事業の正否の鍵を握る重要な役割を担う機関」であるが、現在のところ、その構成は「商店街の組合や商工会議所、商工会などが中心」になるものと想定されている。
 このように「TMO」は地元商業者や関係者のコンセンサスを得ながら「事業計画を作成」していくことになるが、それは「建物やアーケードの整備」といったハードな施設だけではなく、「ソフトなシステムまで含む広範な内容」とならなければならない。「中心市街地活性化法」を生かすも殺すも「TMO次第」といわれる所以もここにある。「市街地整備と商業振興を一本的に進める」ための「調整役としての役割と機能」が要求されている。
 このように「中心市街地活性化法」は非常に広範囲の分野にわたる「街づくりの計画」の推進を意図したものであり、活性化対策の基本は「市町村の主体性・自主性」を重視しながら、「関係省庁の連携・協力」を図ることにある。また、中心市街地全体を1つのものと見て計画を推進し、これまでの「点(個店)」や「線(商店街)」の対策から一歩進めた「面(中心市街地全体)」まで対象を広げている点が特徴となつている。
 従って、この「中心市街地活性化法」が効果を発揮するか否かの決め手となるのは、市町村とTMOが共有する「高邁な理念と強い意欲」、「対極的な洞察力と的確な判断力」「幅広い知識と豊富な経験」などの結集であるが、これらの全てを市町村の職員や商店街などの関係者だけで賄うことは到底不可能であろう。この場合に全てを「丸投げ」するのではなく、理念や方向をしっかりと見据えながら「欠けている知識や情報、経験などを補強する」という目的で、外部の力を活用するという姿勢が大切である。
 「中心市街地活性化の事業主体として相応しいのは誰か」というのが問題である。今回の「中心市街地活性化法」は、単なる「商業者の救済対策」でもなければ「経営意欲も乏しい商店街を延命させるための産業政策」でもない。かといって商店街を無防備のまま「市場経済のメカニズム」に委ねてしまうことはできない「商店街の機能と役割」があることも否定できない。
 活力に満ちた中心市衛地の商店街は、その地域で生活を営む「住民が享受することのできる基本的な権利」であり、そのための「社会的な基盤(インフラ)」の一つだと考えられる。しかし、その活性化事業の推進に重要な役割を担う「TMO」は、各地の「商工会議所や商工会がその受け皿」になるであろうと予想されている。また、「TMO」として「街づくり会社の設立を計画」する動きもあるが、その場合の地域の商店街、商工会議所、商工会などを「株主に想定」にしているケースが多い。
 しかし、一般的にいって、既成の組織(商工会議所・商工会など)は新たな方向を目指して取り組む「自由な発想は苦手」とする場合が多い。「TMO」の役員人事や事業の優先順位などを巡って各商店街の間の調整が難航することも懸念される。そうして紆余曲折の結果、結局従来とあまり変わり映えのしない商店街対策に終わってしまうという心配も皆無ではない。
 商店街は商業者の問患であり、商業政策の範疇であるという狭い考え方にとらわれず、市民の暮らしを支える共通の「社会的基盤(インフラ)」としての「中心市街地商店衛」という広い視野にたって、広範囲の「市民参加のシステム」を検討すべきであろう。当然のことながら農業者や他産業の関係者、住民や地域の文化団体、福祉団体などのさまざまな層が主体的に参加する、地域の総体としての〃街づくり運動”の一環としてとらえる必要がある。
 中心市街地活性化の問魅や運動が、商業者や行政など狭い範囲の関係者だけの手から離れて一般市民の参加にまで広がった時、市民にわが町に対する「意識や愛着」が芽生え、ユニークな街づくりの発想やアイディアが芽生え、定着する可能性も期待できるのではないだろうか。
 市町村が「基本計画を策定」することから始まることになるが、基本計画には「土地区画整理事業による街地区の再編」や、「共同駐車場の整備」、’「市街地居住を推進するための住宅建設」など、地域の事情に応じた基盤整備までが含まれる。さらにそうした「ハードの整備」に連動して「商店街への各店舗の誘致」や、「空き店舗対策」、「カード化事業」、「TMOの創設」などの「ソフトの整備」まで計画に盛り込める事業は多岐にわたっている。
 従ってこうした「多様な支援事業」をどのように「組み合わせ」、民間の事業や「地元商店街の意向」をどう取り込んでいくか、市町村の「計画立案・企画調整能力」が問われることになる。





4.全ては地域アイデンティティの確立から始まる
 中心市街地の再生と活性化の問題を考える場合、単に中心部の商店衛だけの殻に閉じこもって、狭い範囲の商業集積を対象とした対応策のみでは、問題解決の効果は乏しいことになるだろう。商店街を中心に、その関連する領域や地域内の各地区とのさまざまな結びつきを深めながら、地域としての総合的な活力を高める方向を目指すことが必要な時代になったと考えるべきであろう。まさに、「地域経営の時代」である。
 社会は絶えず生きて動いているが「街」や「地域」もその例外ではなく、何らかの対応策が完了したとしてもそれがゴールではなく、その日から既に時代とともに新たな変化を始めることになる。特に商店街はそうした性質を強く持っている。このような変化は単にハードな施設の整備や精袖運動といった面だけに止まらず、地域の総体としてのイメージまでを含む広範な内容となる。
 しかもその変化は、時代に流されて無意識のうちに自然発生的に進行していくということではなく、意識的・計画的に進める必要があることは言うまでもない。その際に重要な意味をもつものがその地域のイメージであり、そうしたイメージを創出するCI戦略である。
 そもそも「CI(コーポレートアイデンティティー)」とは、その名前が示しているように企業社会で始められた活動であるが、時代の変化とともに地域や行政組繊まで含む広い分野で取り上げられるようになってきている。本来の「CI運動」とは、企業を取り巻く外部環境や組織の外の社会に対する対外的な活動と、企業の内部の意識改革を推進するための対内的な運動との2つの要素が組み合わされたものだといえるが、この関係は地域においても全く変わりはしない。
 しかし、現実に行われているCI運動を見ると、必ずしも本来の目的を十分理解した上で進められているとは思えないような場合が多い。CI運動を単なるPRや宣伝などの為の手法だと考えて、名称の変更やシンボルマーク・ロゴタイプなどの衣替えに熱中し、またそうすることがCI運動であると誤解している傾向がなきにしもあらずである。
 「CI(コミュニティアイデンティティー)運動」とは、商店街や地域のイメージを創り、構成員や地域内の意識を変え共感を形成していくための活動であり、こうした地域における「CI運動」の効果的な推進が、地域内の産業や人々の暮らしに活力をもたらし、中心市街地の再生や商店街の活性化のために有効な戦略的な手段となる。そして、その際、イベントは「CI運動」を進める際の有力なメディアである。
 これまでも商店街の再生と活性化を目指して各地でさまざまな試みがなされてきたが、いずれも「ハードの施設」の整備や「場当たり的なイベント」などにウェイトが置かれることが多く、地域のイメージを変え、情報発信機能を高めるための「戦略体系の構築」とはなっていない場合が多い。
 「街づくり」を始めるに当たっては、まず第一に自分たちの地域をどんな地域にしたいのか、そのあるべき姿についてのハツキリとした理念を確立するところから始まらなければならない。商店衛についても同様であることは言うまでもない。自分たちの地域のあるべき姿を見出し、それを実現するためにはどのような方向を目指して、どのような施策を積み上げればよいのか、そのためにどんな施設を整備し、どんな運営をオペレーションのシステムを構築すればよいのかなどの目標をしっかりと定めて動き出す必要がある。
 言い換えると、(彰どのような地域を創ろうとするのか、Aそのために果たすべき商店衛の機能と役割は何か、B地域内の産業や住民の暮らしとの関わりをどのように考えるのか、Cその目的を実現するためにどのような商店街を創ろうとしているのか、Dそのためにどんなイメージを構築しようとしているのか、などを計画時点から十分に検討し明確な目標を定めて、全ての作業をその目標に向かって集約していく必要がある。
 現代の社会は「地域も経営の時代」を迎えているが、地域のあるべき姿についての理念を確立し、地域全体像を僻徹しながらその進路を定め、縦割り行政の弊害を打破して、地域内の総力を結集して取り組むことこそ、真の意味での「地域経営」の実践である。
 近代化・工業化の過程で都市や地域も個性を失い画一化された「金太郎飴」の社会に変貌してきたが、それに伴ってコミュニティ意識も次第に希薄になってきている。新しい時代を迎えて、個性豊かな地域の創造を実現するためのコンセプトが求められており、その成果がこれからの「地域と地域との競争」に生き残る唯一の道である。








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